ネコと台風とホームレス。

1週間ほど前の話。
夕方になって陽射しが和らいだ頃、いつものように散歩をしていると
うちの真裏にあるマンションの駐車場で一匹の子猫を見かけた。
まだ生後数ヶ月くらいなのだろう。
体は小さく車の下でおびえるようにこちらを見ている。
懐いてはこないだろうとわかっていたけれど
好奇心で寄ってこないかなと、あの手この手を試してみたが効果はなく
ちょっと目を離した隙にどこかへ行ってしまった。

それから数日経った昨日の夜。
2時過ぎくらいだっただろうか。
窓の外からなにやらドタドタと音がする。
しばらくするとネコの鳴き声が。
その鳴き声はか細くて、甲高い。
すぐにこの前の子猫だと気がついた。
うちのパームさんものそのそと起き出して
窓ごしにじっと外を眺めている。
しばらくすると鳴き声もやんだのだが
まだどこかにいないかと、少しばかりのエサを持って近くまで行ってみたが
あたりは静寂に包まれていて物音ひとつしなかった。

そして、今日。
いつものように夕方になってから散歩に出かけた。
きちんとネコのエサを準備して。
ちょうど台風が近づいてきているので
懐くようなら、パームさんにはちょっと迷惑かもしれないけれど
今晩だけでもうちにとめてあげようか
なんてことも考えていた。

数日前に子猫を見かけたマンションまであと少しというところで
近くの公園に住むネコ好きのホームレスのおじさんと出くわした。
公園の少し小高い場所にある、このおじさんが住んでいる住居では
たくさんのネコを飼っていて
今までに何度かそのネコたちをもふもふしたり、写真を撮ったり
させてもらっていたので、そのおじさんとは面識があったが
まともに会話らしき会話をしたことはない。
今日もいつものように目があったと同時に会釈をして
そのまま立ち去ろうかと思ったのだけれど
なにか子猫の情報が聞けないかと、少し話をしてみることにした。
紺色のキャップからは白髪がはみ出していて
白っぽいシャツに濃い色のズボンをはいている。

無難に「台風来てますね」と切り出してみた。
少し雨が降り始めてきている。
「明日の朝6時くらいだから、まだまだ」
そうなんだ。。。風もないし、雨もまだ小雨だから
まだ先だろうと思っていたけれど
このおじさんはオイラよりもしっかりとした情報を持っている。
その後、堰を切ったようにおじさんはしゃべりはじめた。
台風がくると心配なのは、木が折れて屋根を突き破ること。
数年前の台風の時は被害がすごかったということ。
顔や腕は真っ黒に日焼けしていて、上の前歯はなく、左側の犬歯あたりに数本だけ
黄色くなった歯が見える。

雨が少し強くなってきたので
オイラは少し間が空いた時に
「ネコちゃんたちは元気ですか?」と話を本題に近づけようとした。
すると、またおじさんは話をしはじめた。
飼っているネコの紹介から始まって
段ボールに入れて、ネコを捨てに来る人がいること。
そのネコのほとんどが死んでしまったこと。
生まれて間もない子猫が死んでいくのを見るのはとても悲しくて辛いこと。
捨てて行く人たちが許せないこと。
それから、逆にかわいい猫を勝手に持ち去る人もいること。

「そうなんですか。」
などと相づちを打ちながら話を聞いているオイラ。
道を通る人はほとんど傘をさしている。

どこで話がそれたのか覚えてはいないけれど
おじさんはそれ以外にも沢山の話をした。
自転車で何度か事故にあったこと。
以前、久留米(福岡市から約40kmほど離れた都市。オイラの故郷でもある)の警察にお世話になったこと。
久留米大橋の下に12年住んでいたこと。

昔は会社勤めをしていて、
月に40万ほどの手取りがあり、最高で月に168万もらったことがあること。
「!」
実は結婚していたこと。
「え!」
45歳の時に24歳の人と結婚したらしい。
(ちょっと衝撃的だったので、よく覚えていないが、21歳だったかもしれない。)
実は奥さんがマンションを持っていて帰る家があること。
「ちょ!」
近所の会社に勤めている彼女がいること。
「・・・」

ホームレスをしている人たちの中には
元社長とかそういう人もいるとは聞いていたけれど
こんな身近に、しかもたった一人しか知らないホームレスのおじさんが
まさにその人だったなんて!


いつの間にか雨は小降りになっていた。
陽も落ちて、辺りはだいぶ暗くなり始めている。
おじさんは近くの弁当屋さんにご飯を買いに行くといって別れた。
30分くらい立ち話をしていただろうか。
ずいぶん長いこと話をしていたのだけれど
想像すらしなかった衝撃的な事実を知ったせいか
帰り道はまるで放心状態になったかのようで
子猫を探すのも忘れていた。


台風を思わせるような風はまだ吹いておらず
ただ小雨だけがパラパラと降っている。
パームさんはリビングで両脚を投げ出し
オイラを眺めている。


おわり。



 
| 2015.08.25 Tuesday | 01:21 | [ 日記 ] | comments(0) | hatu |

夏の終わり。

8月31日。
時計の針は12時を回り、もう9月になった。

今年はちょっとしんどい夏だった。
数年ぶりの猛暑というのもあったけれど
深刻だったのはまた別の理由。

夏の初めに体調を崩してしまい
本来ならまだエアコン無しで過ごせる時期に
エアコンをつけてしまったせい。
梅雨が明けて、少しずつ暑さに身体が慣れてくる時期に
暑さを感じない環境にいたのだ。
そのおかげで、体調が良くなっても
うだるような暑さが一層身に応えた。

当然、昼間も部屋の中でエアコンをつけていて
夜もタイマーをセットして布団に入るのだけれど
タイマーが切れるとすぐに暑さを感じて起きてしまう。
夜中に目が覚めると、またタイマーをかけて寝て
また起きて、この繰り返し。

慢性的な寝不足。
朝起きてもすっきりしない。
食欲も少ない。

そりゃあ夏バテしない方がおかしい。

 

台風15号の接近に触発された
秋雨前線が大量の雨をもたらしてくれて
昨日からめっきりと涼しくなった。

ようやく夏も終わり。

今年の夏は本当にしんどかったという
悪い思い出しかないのだけれど
最後の最後に素敵なニュースがあった。


相変わらず毎週土曜日はソフトバレーに出かけて
一週間分の運動不足を補うように汗をかいているのだけれど
今年の春先あたりから、ある女の人が突然来なくなった。
他の人に聞いてみると、甲状腺ガンだと言う。
確か32歳くらいだったと思うが
若いからか、ガンの進行は早く
病院で検査してもらった時には
肺まで転移していたらしい。

それから、その人のことは何度か話題にのぼったけれど
「あんまり具合はよくないみたいだね」
という返事に、それ以上聞く勇気はもてなかった。

その人は、数年前からソフトバレーに来始めたのだけれど
若さなのか、性格なのか、
たくましさを感じるほど元気に満ち溢れていて
いつも素敵な笑顔を振りまいてくれていたので
最初はガンなんて信じられなかったほど。


そんな彼女が、今日のソフトバレーにひょっこり顔を出したのだ。
しかも、あいさつ代わりというレベルではなく
完全復活と言わんばかりのはつらつプレイで!

日頃からあんまり会話を交わすほどでもないのだけれど
「久しぶりですね」と声を掛けると
大きくはきはきした声で
「はい!」と答える。

病気のことは知らないふりをして
「お元気でしたか?」と聞くと
「元気です!!」と、これまた威勢の良い返事が。


10年ほど前に、同級生がガンでなくなったので
最悪のことも考えていたのだけれど
そんな不安を一掃するような
彼女の元気な姿を見れて
今日は本当に嬉しかった。


ちょっと張り切りすぎたのか
身体のあちこちが痛いけれど
今年の夏は良い感じで終えることができた。

「終わりよければ全てよし」

それでいいのだ!

明日も笑顔で。
 
| 2013.09.01 Sunday | 00:35 | [ 日記 ] | comments(0) | hatu |

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