夏の終わりとそうめんと。


 我が家では夏のお昼はそうめんと相場が決まっている。
ネクタイを締めて毎朝電車に揺られるサラリーマンならクーラーの効いた店内で、もりそばとかカツ丼という選択肢もあるのだろうが、自営業でオトコの一人暮らしだと所詮こんなものだ。気付けば一人暮らしも20年弱。自炊にもずいぶん慣れてきた。よく知人から「料理できるオトコは偉いね」と言われるが、オイラに言わせると、オトコの「料理ができる」というのは女の子の「料理ができない」と同等のレベルであり、しかも「料理」ではなく「調理」でしかない。
 そんなオイラなので、お昼にささっと何かを作れるほど手際よくもなければ、献立を決めるのも面倒。したがって、必然的にお昼は「調理」が簡単な麺類で済ませてしまう。ラーメンやパスタ、うどん、そばなど、麺類大好きなオイラでも、さすがにうだるような暑さの中でクーラーもつけず熱い出汁をすするほど物好きではない。そこでこの「そうめん」の登場なのだ。
 暑い夏に冷たく涼を取れるのも素晴らしいが、なにより手軽に作れるのが良い。お湯を沸かし、その中にそうめんの束を放り込む。つゆは市販の濃縮タイプをそのまま使う。冷蔵庫から予め切り刻んであるネギを取り出し、つゆに入れる。あとは麺がゆであがるのを待つだけだ。その時間、約1分30秒。こんなに簡単でおいしい料理が他にあるだろうか。しかも安いときたら飛びつかずにはいられない。6〜8束で200円前後。1食当たり約30円。つゆとネギの値段を足しても外食の比ではない。
 食べてもすぐお腹がすくと言われる麺類だが、そこはご飯(白米)でカバーする。そうめんのつゆではご飯のおかずに物足りないので、さらに一品つける。ここまで超お手軽で来たので、どうせなら手軽さにこだわりたい。冷凍食品だ。唐揚げや焼売、コロッケにチキンカツ。最近では自然解凍できるミニハンバーグまである。一時期バジル風味の唐揚げというのにハマっていたが、毎日のようにそうめんと一緒に食べていたら、さすがに飽きてきて最後はその匂いを思い出すだけで気分が悪くなってしまった。今は鮭フレークを愛用している。
 そんな獅子奮迅な大活躍をしてくれる「そうめん」なのだが、唯一欠点がある。それは、夏しか活躍できないということ。厳密に言えば、うだるような暑さの中でしか、その類い希なる能力を発揮できないのだ。雨が降っていて室内に心地よい風が吹き込む時や、あまりの暑さでクーラーをつけているときは、彼の出番は決して訪れない。そして秋の爽やかな気候になるともう彼の出番は翌夏までやってこない。にゅうめんという手もあるのだけれど、先述したように「調理」しかできないオイラには繊細な味付けをする技術もなければ、計量スプーンもない。かなり致命的だ。
 季節の移り変わりは唐突にやってくる。つい先日まで滝のような汗をかいていたのが嘘のように、ある日突然空は高くなり、セミの鳴き声は都会の喧噪に消し去られていく。その季節の変わり目を予測するのは容易ではない。
 そうめんのストックが残り2〜3束になると、次のそうめんを買うべきかどうか、そんなことを悩んでしまう時期がもうすぐやってくるんだなぁと、恨めしいほど暑かった夏が名残惜しくなる。そんな処暑の深夜。明日のお昼もきっとまた懲りずにそうめんをゆでていることだろう。 
| 2012.08.24 Friday | 03:06 | [ え と ぶん ] | comments(0) | hatu |

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